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奪われる。

慣れ親しんだ光景が奪われる。
業火の色に焼き染められ、黒ずんだ影と化していく。
泣いても、叫んでも、声高に慈悲を乞おうも、大切なものは剥がされ、奪われていく。
終には、燃え盛る灯すら、奪われる。
残ったのは、灼熱の這いずる音、うねる黒煙の臭気、そして――
思い出の残骸を爆ぜさせつつ去る、硬い足音。
――と。
翻る、ほんの僅かな人の残り香。
ああ、と思う。
次は、きっと。

わたしが、あの冥い焔に奪われるの。




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